オーツミルクの抹茶ラテは、牛乳で作ったものと同じ抹茶・同じ分量では味が決まりません。この記事では、オーツミルクの成分から見た抹茶の選び方、配合の目安、サンプルでの比べ方、よくある失敗の直し方をまとめます。シンガポールやタイで植物性ミルクのメニューを出しているお店の仕入れ担当者に向けた内容です。
牛乳とオーツミルクでは抹茶の見え方が変わる
まず、ミルク側の違いを押さえます。下の表は、日本の食品成分表にある普通牛乳と、バリスタ用オーツミルク2銘柄の公式表示を並べたものです。
| 項目 | 普通牛乳(100g) | Oatly Barista Edition(100ml) | OATSIDE Barista Blend(100ml) |
|---|---|---|---|
| たんぱく質 | 3.3g | 1.1g | 0.6g |
| 脂質 | 3.8g | 3.0g | 3.2g |
| 炭水化物 | 4.8g | 7.1g | 8.1g |
| うち糖類 | 乳糖が中心 | 3.4g | 2.8g |
| 主な油脂 | 乳脂肪 | 菜種油 | キャノーラ油 |
違いは3つあります。
1つ目は、たんぱく質が少ないことです。牛乳のコクの一部はたんぱく質と乳脂肪から来ます。オーツミルクは植物油でとろみとコクを補っているため、口当たりは軽めになりやすく、抹茶の輪郭がぼやけるか、逆に苦味だけが浮くかのどちらかに振れがちです。
2つ目は、オーツ由来の甘さと香りがあることです。Oatlyは、製造工程で酵素がオーツのでんぷんを分解し、麦芽糖(マルトース)ができて自然な甘さになると説明しています。甘味料を足していなくても、穀物らしい甘い香りが最初からあります。この香りが、抹茶の青い香りや旨味とぶつかることがあります。
3つ目は、色です。牛乳は白く、抹茶の緑がそのまま出ます。オーツミルクはわずかにベージュがかっているため、同じ量の抹茶でも色が黄みに寄り、くすんで見えます。
このため、牛乳用に選んだ抹茶をそのまま使うと「色が薄い」「抹茶の味がしない」「後味が苦い」という声が出やすくなります。
等級と茶期の選び方
ラテ向けの等級から始める
抹茶は大きく、点てて飲むセレモニアル、ミルクと合わせるラテ、お菓子や料理に使うカリナリーに分かれます。等級ごとの違いは抹茶の等級にまとめています。
オーツミルクで迷ったら、ラテ等級から選びます。セレモニアルは繊細な香りが持ち味で、ミルクに入れると香りが埋もれやすく、原価も上がります。カリナリーは加熱や他の素材と混ぜる前提のものが多く、飲み物にすると苦味や渋味が前に出やすくなります。
一番茶と二番茶の違い
一番茶(その年の最初に摘む新芽)と二番茶(一番茶のあとに伸びた芽を摘んだもの)では、成分が違います。日本茶の成分を整理した学術レビューでは、一番茶から作った抹茶は冬の間に蓄えたアミノ酸が多く、旨味成分のテアニンが豊富だとしています。摘む時期が遅いほどテアニンは減り、渋味のもとになるカテキンは増えます。
オーツミルクでの出方は次のように考えます。
- 一番茶のみのラテ等級:旨味と甘い香りが強く、色も鮮やかです。オーツの甘さと重ねると丸い味になります。抹茶の量を少なめにしても味が残ります。
- 一番茶と二番茶を合わせたラテ等級:渋味とキレが少し加わります。オーツミルクのとろみに負けず、甘味料を入れても抹茶の存在感が残ります。価格も抑えやすくなります。
どちらが正解というより、メニューの方向で選びます。甘さ控えめで抹茶の香りを主役にするなら一番茶のみ、甘くしてもしっかり抹茶味にしたいなら一番茶と二番茶の合わせが合いやすい、というのが出発点です。
産地と挽き方
宇治、八女、静岡、鹿児島、宮崎など、産地によって品種や栽培の傾向は違います。ただ、ラテ用の抹茶は複数の碾茶(てんちゃ:抹茶の原料となる、揉まずに乾燥させた茶葉)を合組(ごうぐみ:複数の茶をブレンドして味を整えること)して作ることが多く、産地名だけで味は決まりません。産地は候補を絞る手がかりにとどめ、最後は実際にオーツミルクと合わせて決めます。
挽き方は、石臼挽きと機械挽きがあります。抹茶は碾茶を石臼か機械で粉にしたものです。粒が細かいほど口当たりがなめらかになり、ミルクの中でも沈みにくくなります。ラテではなめらかさが味の印象を大きく左右するため、サンプルの段階で口当たりも確かめます。
配合の目安
ここからは、試作の出発点になる分量です。カップの大きさやミルクの銘柄で変わるので、この数字から増減して決めます。
ホット
- 抹茶:3g
- お湯:40ml(70〜80℃)
- オーツミルク:180ml
京都府茶業研究所は、点てて飲む抹茶について、茶こしでふるった抹茶約2gを70〜80℃のお湯70mlで点てる方法を案内しています。沸騰したてのお湯は苦味が出やすくなるため、ラテでも同じ温度帯で溶きます。オーツミルクは抹茶より味がはっきりしているので、牛乳で作るときより抹茶を0.5〜1g多めにすると、抹茶の味が残りやすくなります。
ミルクを温めるときは、各メーカーが案内している温め方に従います。温めすぎるとオーツの香りが強くなり、抹茶の香りが隠れます。
アイス
- 抹茶:3〜4g
- お湯:30ml(70〜80℃)
- オーツミルク:150ml
- 氷:カップに合わせて
氷が溶けると味が薄まるため、ホットより抹茶をやや多めにします。抹茶は少量のお湯で濃く溶き、冷たいオーツミルクの上から注ぐと、緑と白の層がきれいに出ます。
甘味料との相性
オーツミルクには、先に書いた麦芽糖由来の甘さがもともとあります。牛乳のときと同じ量の甘味料を入れると甘すぎることがあるので、まず甘味料なしで味を見てから足します。
- 砂糖(シロップ):味がまっすぐで、抹茶の香りを邪魔しにくい組み合わせです。量を決めやすく、店舗での再現性も高くなります。
- はちみつ:香りが強く、オーツの穀物の香りと重なると抹茶が隠れやすくなります。使う場合は抹茶を多めにします。
- 黒糖やパームシュガー:コクが加わり、二番茶を合わせたキレのある抹茶とよく合います。色は茶色に寄るので、見た目の緑を重視するメニューには向きません。
- 甘味つきのオーツミルク:甘さを抹茶の量で調整できなくなります。甘さを店側で決めたいなら、甘味料無添加の銘柄を選びます。
オーツミルクの銘柄で変わること
同じ抹茶でも、オーツミルクの銘柄を替えると味が変わります。仕入れ前に見る点は3つです。
バリスタ用かどうか
バリスタ用は、泡立ちと温かい飲み物での安定を前提に作られています。Oatlyは、バリスタ用に入っている酸度調整剤(リン酸二カリウム)について、酸性のコーヒーで植物性ミルクが分離するのを防ぐために使っていると説明しています。抹茶ラテでもフォームを作るなら、バリスタ用を基準にします。一般用は泡が粗くなりやすく、フォームアートには向きません。
甘さ
甘味料無添加でも、製法によって糖類の量は銘柄ごとに違います。上の表でも、Oatly Barista Editionは100mlあたり3.4g、OATSIDE Barista Blendは2.8gと差があります。甘さが強い銘柄ほど、抹茶はキレのあるものを選ぶとバランスが取れます。
とろみと油脂
油脂の量や種類で、とろみと後味が変わります。とろみが強い銘柄は抹茶の苦味を包みますが、香りも包んでしまいます。軽い銘柄は抹茶の香りが立つ一方、苦味も目立ちます。お店で使っている銘柄を決めてから抹茶を選ぶのが確実です。
サンプルで何を比べるか
候補を2〜3種類に絞ったら、同じ条件で並べて比べます。
- お店で実際に使っているオーツミルクを用意します。銘柄を替えると結果が変わるため、試作用に別の銘柄を使わないでください。
- 抹茶の量、お湯の温度、ミルクの量をすべて同じにします。
- ホットとアイスの両方を作ります。温度で香りの出方が変わります。
- 甘味料なしと、メニューで使う甘さの両方を飲みます。
- 作ってから10分ほど置いたものも確かめます。テイクアウトでは、時間がたった状態でお客様が飲みます。
見るポイントは次のとおりです。
- 色:作りたてと10分後で、緑がどれだけ残るか
- 香り:最初の一口で抹茶の香りが分かるか、オーツの香りが勝つか
- 苦味:飲み終わりに苦味や渋味が残りすぎないか
- 口当たり:粉っぽさやざらつきがないか
- 原価:1杯あたりの抹茶代が、売価に対して収まるか
よくある失敗と対処
| 症状 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 色がくすむ、黄色っぽい | オーツミルクのベージュ色に抹茶の緑が負けている。抹茶の劣化 | 抹茶を増やすか、色の鮮やかな一番茶のみのラテ等級に替える。開封済みの抹茶は早めに使い切る |
| ダマが残る | 抹茶を直接ミルクに入れている。ふるっていない | 茶こしでふるってから少量のお湯で溶き、そのあとミルクと合わせる |
| 分離する、ざらつく | 一般用のオーツミルクを温めている。温めすぎ | バリスタ用に替え、メーカーの案内する温め方に従う。使う前に容器をよく振る |
| 抹茶の香りが消える | ミルクが多すぎる。甘味料の香りが強い | 抹茶を0.5〜1g増やすか、ミルクを減らす。はちみつは控える |
| 苦味だけが残る | 熱湯で溶いている。キレの強い抹茶を軽い銘柄と合わせている | 70〜80℃で溶く。一番茶のみのラテ等級を試す |
色については、抹茶の保存状態も関係します。抹茶の緑はクロロフィルという色素によるもので、熱や光で分解すると黄褐色に変わります。伊藤園の研究者による保存試験では、原料抹茶を37℃で保存すると4週目以降は品質が使えない水準まで落ち、25℃以下なら24週まで品質を保ったと報告されています。気温の高い地域では、未開封の抹茶は冷蔵庫か冷暗所に置き、冷えたまま開けずに常温に戻してから開封します(低温のまま開けると結露して劣化が早まるためです)。開封後は光と湿気を避けて、短期間で使い切ります。
Konnichiwa Matchaで試す場合
Konnichiwa Matchaは、宇治・八女・静岡・鹿児島・宮崎の抹茶・ほうじ茶・玄米茶を23商品扱っています。オーツミルクのラテなら、まずラテ等級のカタログから、一番茶のみのものと、一番茶と二番茶を合わせたものを1つずつ選ぶと、違いが比べやすくなります。
サンプルは最大3種類まで請求できます。お店で使っているオーツミルクの銘柄と、出したい甘さを教えていただければ、候補の絞り込みからお手伝いします。シンガポールとバンコクのお店には伺って、一緒に味見をします。
候補の中に合うものがなければ、お店のミルクと甘さに合わせて合組を調整します。決めた配合は記録し、次の注文も同じ味でお届けします。詳しくは配合の調整をご覧ください。注文は1kgから受け付けています。
参考にした情報
- 文部科学省 食品成分データベース「普通牛乳」: https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=13_13003_7
- Oatly「Oatly Oat Drink Barista Edition Chilled」: https://www.oatly.com/en-gb/products/chilled-oat-drink/chilled-oat-drink-barista-edition-1l
- Oatly「Our process」: https://www.oatly.com/oatly-who/our-process
- Oatly Professionals「FAQ」: https://professionals.oatly.com/health/faq
- OATSIDE「Barista Blend Oat Milk」: https://shop.oatside.com/products/barista-blend
- Compositional Diversity and Functional Interactions of Bioactive Compounds in Japanese Green Tea: Focus on Matcha, Sencha, and Gyokuro(PMC): https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13515311/
- 京都府茶業研究所「お茶のおいしい入れ方 抹茶」: https://www.pref.kyoto.jp/chaken/irekata_maccha.html
- 原口康弘ほか「原料抹茶の保存条件が品質に与える影響」茶業研究報告 93号(2002): https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/2002/93/2002_93_1/_article/-char/ja/
- 山政小山園「抹茶の取扱い」: https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/matcha/basic/handling.html





