海外の卸サイトでは、抹茶が「セレモニアル」「ラテ(カフェ)」「カリナリー」の3つに分けて売られています。この呼び名には公的な基準がなく、同じ名前でも売り手によって中身が違います。この記事では、等級の差を生む要素と、カフェで仕入れるときの確かめ方を整理します。
抹茶の等級には公的な基準がない
最初に押さえておきたいのは、等級名が規格ではないことです。日本にも国際規格にも「セレモニアル」「ラテ」「カリナリー」を区分するルールはありません。
日本での「抹茶」の定義
日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」は、抹茶を「碾茶を茶臼等で微粉末状に製造したもの」と定義しています。碾茶(てんちゃ:抹茶の原料になる茶葉)は、摘採前に茶園をよしずや寒冷紗などで2〜3週間程度覆い、摘んだ葉を蒸して、揉まずに乾燥させたものです。
茶臼は碾茶を粉にする石臼を指します。ただし「茶臼等」には、粉砕方法を問わず石臼に準じた機能を持つ機器も含まれます。つまり機械で挽いたものも、原料が碾茶であれば定義上は抹茶です。
同じ基準は、これとは別に「粉末茶」を「茶を粉砕機等により粉末にしたもの」と定めています。煎茶などを粉にした粉末茶は、抹茶とは別の茶です。
ISO 20715:2023 の位置づけ
ISO 20715:2023 は、茶の種類を加工方法で分類する国際規格です。抹茶は緑茶の下位分類の一つとして載っています。定義は、日陰で育てた若い葉・芽を蒸して酵素の働きを止め、揉まずに乾燥し、細かく挽いて粉にしたもの、という内容です。
この規格は茶の「種類」を分けるもので、品質の等級は定めていません。日本の表示基準も同じです。等級名は、売り手が用途の目安として付けている呼び名だと考えて扱う必要があります。
等級の差を生む6つの要素
等級名に基準がない以上、比べるべきは中身です。抹茶の品質を左右する要素は、次の6つに分けられます。
茶期(一番茶・二番茶・三番茶以降)
茶期(ちゃき:その年の何回目の摘採か)は、品質に最も大きく効く要素です。碾茶は一番茶期だけでなく、二番茶期や秋冬番茶期にも作られています。
知覧茶の産地である南九州市は、二番茶について、日光を浴びる期間が長いためカテキンとカフェインが多くなり、旨味や甘みは一番茶より減ると説明しています。三番茶・四番茶は手頃な価格の茶や飲料原料に、秋冬番茶は主にペットボトル飲料に使われるとしています。
被覆栽培の期間
被覆栽培(ひふくさいばい:摘採前に茶園を覆って日光を遮る栽培法)は、抹茶らしさを作る工程です。静岡県立大学の中村順行氏の論文は、遮光によって海苔のような香りの成分(ジメチルスルフィド)が増え、テアニンなどのアミノ酸や葉緑素も増えると整理しています。覆う期間や遮光の強さによって成分量は変わります。
碾茶かどうか
原料が碾茶であることは、抹茶と名乗る前提です。安価な粉末の中には、煎茶などを粉にした粉末茶もあります。農研機構が国産抹茶56点と粉末茶6点を分析した調査では、抹茶は1点を除いてテアニンが1%を超え、粉末茶はすべて1%以下でした。
挽き方と粒の細かさ
碾茶を粉にする方法には、石臼のほかにボールミル式、気流式、積層式などがあります。中村氏の論文によると、石臼や積層式は葉を擦り切るように砕き、ボールミル式は押しつぶし、気流式は衝突させて砕きます。そのため粒の形も異なります。
同じ論文では、茶期がはっきりした静岡県産の抹茶を調べています。粒の大きさがそろった型の割合は、一番茶期で100%、二番茶期で75%、秋冬番茶期で62.5%でした。茶期が遅くなるほど、粒のそろい方は下がる傾向があります。
色
色は葉緑素の量と強く関係します。中村氏の論文では、価格が高い抹茶ほど緑が強く、安価なものほど赤みや黄みを帯びる傾向が見られました。海外で売られている日本産の抹茶は、国内で売られているものより色や粒の幅が広いことも報告されています。
テアニンとカテキン
テアニン(旨味を生むアミノ酸の一種)は根で作られて新芽に運ばれます。被覆するとカテキン(渋みや苦みのもとになる成分)への変化が抑えられ、新芽にたまります。
農研機構の調査では、価格の高い国産抹茶ほどテアニン含量が高い傾向がありました。一番茶を長く覆ったものほど旨味寄り、遅い茶期のものほど渋み寄りになる、と覚えておくと選びやすくなります。用語は抹茶の用語集にもまとめています。
3つの等級の特徴と見分け方
ここでは、一般的に流通している等級の傾向を整理します。売り手によって線の引き方は違うため、あくまで目安です。
セレモニアル
一番茶の碾茶を、石臼など粒をそろえやすい方法で挽いたものが中心です。お湯だけで点てたときに旨味と香りが前に出ます。
- 色: 明るく鮮やかな緑
- 香り: 海苔のような香りや甘い香りがある
- お湯で点てたとき: 渋みが穏やかで、泡がきめ細かい
- ミルクで割ったとき: 味は繊細で、ミルクの量が多いと抹茶の印象が薄れやすい
ラテ(カフェ)
ミルクや甘味と合わせる前提で作られた等級です。一番茶のみのものもあれば、一番茶と二番茶を合わせたものもあります。挽き方は機械挽きが多くなります。
- 色: 緑がはっきりしているが、セレモニアルよりやや深い
- 香り: 茶葉の香りがしっかり出る
- お湯で点てたとき: 渋みや苦みがやや強く、単体では力強く感じる
- ミルクで割ったとき: 色と抹茶の味が残りやすい
カリナリー
三番茶以降の茶葉を機械で挽いたものが中心です。加熱や砂糖、乳脂肪と合わせる用途に向きます。
- 色: 黄みやくすみを帯びた緑になりやすい
- 香り: 青っぽさや香ばしさが出る
- お湯で点てたとき: 渋みと苦みが強い
- ミルクで割ったとき: 色が沈みやすく、抹茶らしい鮮やかさは出にくい
比較表
| 項目 | セレモニアル | ラテ(カフェ) | カリナリー |
|---|---|---|---|
| 茶期 | 一番茶 | 一番茶、または一番茶と二番茶 | 三番茶以降 |
| 挽き方 | 石臼が中心 | 機械挽きが中心 | 機械挽き |
| 色 | 最も鮮やか | 鮮やか〜やや深い | 黄みやくすみが出やすい |
| 味 | 旨味が強く渋みは穏やか | 旨味と渋みのバランス型 | 渋み・苦みが強い |
| 向いている使い方 | お湯で点てるストレート | ラテ、甘いドリンク | 焼き菓子、アイス |
| 一杯あたりのコスト感 | 高い | 中くらい | 低い |
等級表示の落とし穴
等級名だけで仕入れると、届いた品がメニューに合わないことがあります。よくある食い違いは次の4つです。
1つ目は、「セレモニアル」と書かれていてもラテ向けの中身である場合です。二番茶を含むブレンドや機械挽きの品に、この名前が付いていることもあります。表示だけでは判断できません。
2つ目は、売り手ごとに等級の線引きが違うことです。ある卸の「ラテ」が、別の卸の「セレモニアル」と同じ茶期・挽き方であることも起こります。等級名どうしを横並びで比べても意味がありません。
3つ目は、抹茶ではない粉末茶が混ざる場合です。前の節のとおり、煎茶などの粉末茶は日本の基準では抹茶と別の茶です。商品名に「matcha」とあっても、原料が碾茶か確かめる必要があります。
4つ目は、同じ商品でもロットで品質が変わることです。茶は農産物なので、年や茶期によって色や味が動きます。最初のサンプルだけで決めず、継続して確かめる仕組みが要ります。
仕入れで確かめる項目
等級名ではなく、仕様と現物で判断します。問い合わせの段階で、次の項目を出してもらってください。
| 確かめる項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 茶期 | 一番茶のみか、二番茶や三番茶以降を含むか |
| 産地 | 県や地域が書かれているか |
| 原料 | 碾茶であるか |
| 挽き方 | 石臼か、機械挽きか |
| COA | 品質分析の証明書(Certificate of Analysis)がロットごとに出るか |
| 残留農薬検査 | 輸出先の基準に合う検査結果があるか |
| ロットの扱い | 次回以降も同じ仕様で供給できるか |
書類がそろったら、サンプルを並べて比べます。比べ方は次の手順が分かりやすくなります。
- 白い紙の上に粉を少量ずつ並べ、色を見比べる
- 同じ量・同じ湯温で点て、香りと渋みを比べる
- お店で実際に使うミルクで割り、色と味がどれだけ残るかを見る
- 甘いドリンクや焼き菓子に使うなら、その配合で試作する
手順3が特に重要です。牛乳、オーツミルク、豆乳では、同じ抹茶でも色の残り方や味の出方が変わります。実際のミルクで試してから等級を決めることで、仕入れ後の作り直しを防げます。
メニュー別の選び方
最後に、メニューごとの選び方をまとめます。
ストレート(お湯で点てる)
旨味と香りがそのまま出るため、一番茶のセレモニアルを選びます。 粒がそろっていると、口当たりがなめらかになり、泡も細かくなります。
ラテ
ラテ向けの等級を基本にします。ミルクの量が多いメニューでは、セレモニアルより抹茶の味が残りやすいことがあります。味の強さを優先するなら一番茶と二番茶を合わせたもの、香りを優先するなら一番茶のみのものが候補です。
甘いドリンク
シロップや練乳を使うドリンクでは、甘さに負けない渋みが必要です。ラテ向けの等級の中でも、味がしっかりしたものが合います。色を見せるドリンクなら、甘味を入れたあとの色も確かめます。
焼き菓子・アイス
加熱や乳脂肪、砂糖で香りが飛びやすいため、カリナリーで十分な場合が多くなります。ただし焼き上がりの色を重視する商品では、ラテ向けの等級を使うと緑が残りやすくなります。原価と見た目のどちらを優先するかで決めます。
Konnichiwa Matchaの等級
Konnichiwa Matchaでは、抹茶を3つの等級に分けています。
- セレモニアル: 一番茶だけを石臼で挽いたもの。点てて飲むメニュー向けで、7商品あります
- ラテ: ミルクや甘味と合わせても色と香りが残るもの。一番茶のみのものと、一番茶と二番茶を合わせたものがあり、主に機械挽きです。9商品あります
- カリナリー: 三番茶以降を機械で挽いたもの。焼き菓子・アイス向けで、1商品あります
ほうじ茶と玄米茶の粉末は、等級とは別に扱っています。産地は宇治、八女、静岡、鹿児島、宮崎です。
ロットごとに、色、粒の細かさ、お湯で点てたときとラテにしたときの味、COAと残留農薬検査の書類を確かめています。サンプルは最大3種類まで、注文は1kgから受け付けています。お店のミルクに合わせた配合の調整にも対応します。比べたい等級が決まったら、サンプル請求からお申し込みください。
参考にした情報
- 公益社団法人日本茶業中央会「緑茶の表示基準」 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
- ISO 20715:2023 Tea — Classification of tea types(プレビュー) https://cdn.standards.iteh.ai/samples/75419/b937ca9e8b964f538549fe9a8cae15b5/ISO-20715-2023.pdf
- 農研機構「国産抹茶の価格と化学成分含有量の関係」 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2018/nifts18_s16.html
- 中村順行「国内における抹茶(碾茶)生産の推移と科学的特性」(静岡県立大学 茶学総合研究センター) https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/labs/tsc/thesis/0410.pdf
- 南九州市「二番茶・三番茶・四番茶・秋冬番茶」 https://www.city.minamikyushu.lg.jp/chirancha/ajiwau/chirancha_shurui/8903.html





